こんにちは、看護助手を辞め4月から介護士になる、ままる@mamaru0911です。
格安海外ツアーを中心とした旅行会社「てるみくらぶ」が、事実上の破産をしたとの発表をしました。
てるみくらぶ破産 社長が謝罪 | 2017/3/27(月) 12:23 – Yahoo!ニュース
てるみくらぶの山田千賀子代表取締役社長は、てるみくらぶの経営悪化の原因について「新聞広告を打ち出したことによる媒体コストの増加」
を語っていますが、僕にはどうも腑に落ちません。
てるみくらぶの経営悪化については、媒体コストとは別の元凶があると思います。
今日はそんなお話です。
目次
てるみくらぶとは
東京渋谷区に本社を持つ旅行会社です。
主に海外の格安ツアーをメインに取扱い、従業員数150名程度、売上高130億円程度の会社だったようです。
細かい経緯は分かりませんが、情報だけ見ると1998年設立の会社ですから、旅行業に関するノウハウが無かった訳ではないような気がします。
てるみくらぶの破産の背景
先週24日から、空港のチケットカウンターで「てるみくらぶ」で購入したチケットが発券されないというトラブルが相次ぎ、問題になりました。
これは航空券の発券に必要となるIATA(国際航空運送協会)への約4億円の支払いが出来なかったのが原因と見られています。
週が開けた27日、てるみくらぶの山田千賀子代表取締役社長が会見を開き、同社が破産申請に至ったと報告しました。
破産総額はおよそ151億円で、一般旅行客9万人、約100億円規模の混乱が出ているとの報道です。
現時点でもおよそ2500人の旅行客が38の国々に滞在中で、無事に帰国出来るかどうかが不安視されています。
てるみくらぶのビジネスモデルとは
てるみくらぶは、「激安価格」を売りに海外ツアーのインターネット販売で、その業績を上げて来た会社です。
「激安ツアー」のカラクリは、航空会社の余った「空席」を安く仕入れ、さらにホテルの余った「空室」と組み合わせる事により、利用者に「激安」で旅行費用を提供出来るというものです。
しかし2000年当初はうまくいっていたこの仕組みも、限界がきていたように思います。
各航空会社は「空席」という無駄を省く為に、機体を小型化したり、その分便数を計算したりとコスト管理を厳密に行うようになりました。
ホテル自体も「空室」を見過ごさず、自社でのネットプロモーションや付加価値をつけた販売で「空室」自体を少なくする取り組みを行って来ました。
結果「てるみくらぶ」のような旅行会社は、商売の要である「仕入れ」が困難になっていたと考えられます。
てるみくらぶは「新聞広告による媒体コストの上昇」が、破綻の原因だとしていますが、本質的な原因はそこではないのです。
ビジネスの歯車は一旦回ると止まらない
仕入れが以前より難しくなりながらも、会社の業績はあげて行かなくてはいけません。
「てるみくらぶ」のような会社の場合、顧客にリーチする価値の大部分は「価格」です。
とにかく「香港旅行が一万円!」とか「ハワイ旅行が10万円!」とか、金額で圧倒的な安さを固辞しなくては、顧客を集める事が出来ません。
つまり一旦「激安ツアー会社」を立ち上げてしまうと、その経営の根幹であるビジネスモデルを大きく変化させない限り「激安」価格を維持しなくてはいけないんですね。
実際に僕は旅行業を経営した事はありませんが、おそらく今回の騒動の引き金となった「IATA(国際航空運送協会)」や各航空会社、さらに宿泊先であるホテルなどへの「てるみくらぶ」側からの支払いは、月締めで後払いになっていたはずです。
一つ一つのツアーが赤字であっても「激安」につられた大量の顧客たちが入金してくれるお金を、それらの支払いに充てれば会社のキャッシュフローはなんとか回せます。
実際に「てるみくらぶ」は2016年9月期には月商190億以上の最高売上を記録しています。
決算処理はどうしていたか分かりませんが、実はこの時点でてるみくらぶの台所事情は火の車だったことが想像出来ます。
- 仕入れが高くなっても、その分売値は上げられず赤字になる。
- 現金が集まらなくては、各関係個所への支払いが出来ない。
- 支払いが出来なければ、事業自体が破綻する。
- だからもっと安い金額で客を集めて現金化しなければならない。
こういう負のスパイラルに落ちていたわけです。
事業というものは、一旦回り出すともう止められません。
てるみくらぶの事例は褒められた話では決してありませんが、同じように事業をしてきた僕からすると、痛いくらい社長の気持ちは分かります。
世の中儲かってる会社ばかりでは無い
世の中のニュースになるのは、良くも悪くも有名な会社ばかりです。
何故なら名も無い中小企業のニュースを取り上げても、誰も関心がないからです。
しかし日本の企業の99%は中小企業です。
中小企業の場合、決して儲かっている会社ばかりではありません。
まさに「てるみくらぶ」のように、なんとかキャッシュを回して凌いでいる会社の方が多いのが現状ではないでしょうか?
事業とは不思議なもので「キャッシュ」があれば業績が赤字でも、なんとか継続出来ます。
しかし、てるみくらぶのように「キャッシュが追いつかなくなった瞬間」に会社は潰れます。
なのでそのキャッシュが実利で儲けたお金なのか、銀行からの借入なのかは最悪問題ではありません。
キャッシュが無くなったとき、それが事業にとっての「死」なのです。
山田社長は破産を予見出来なかったのか?
てるみくらぶの山田千賀子代表取締役社長は
「まさかこんなことになるとは思わなかった」
というような趣旨のことを言っていましたが、これは
「あなたは詐欺をはたらいたのですか?」
という言葉に対してのプロテクションだと僕は思います。
まっとうに社長として経営に携わっていれば、自社の「ヤバさ」は充分に分かっていたはずです。
てるみくらぶが、現状のビジネスモデルの延長線上ではなく、なにか別の儲けの仕組みを生み出さなくては、遅かれ早かれ破綻するのは他ならぬ社長が一番わかっていたはずです。
でも中小企業の社長なんて、ほとんど同じような感覚だと思います。
実際に僕も、会社を経営していた当時は毎月月末を超えると
「今月もなんとかなった」
という安堵感でいっぱいでした。
潤沢な名部保留金を持っている中小企業なんて、ほんとうにごく一部です。
内定を取り消された学生たち
てるみくらぶは、2017年度も積極的な新卒採用を行っていたようです。
実は新卒採用を行っていた、てるみくらぶの2017年度内定者の悲しみの声…内定辞退者の声も – Togetterまとめ
あと数日で新社会人、という大きな期待を持っていた若者たちは、寝耳に水の大パニックでしょう。
顧客や従業員に対して、当然てるみくらぶは大きな責任があります。
今後どのような処理をしていくか分かりませんが、事業失敗の代償は小さなものではありません。
しかし、多くの人に知ってもらいたいのは、現在の日本の会社のほとんどが「てるみくらぶ」と似たような状況にあるということです。
てるみくらぶの破産は、本質的にはつい先日書いたこのエントリーと同じです。
モンテローザ「魚民」「白木屋」大量閉店|居酒屋の生ビールが500円で無くてはいけない理由 – グッドノージョブ
居酒屋の生ビールは500円じゃなきゃいけないんだよ
世の中は多様化しています。
今や「安かろう悪かろう」では商売になりません。
「安くて良いもの」
でなければ、顧客はついてくれないのです。
しかし「安さ」には限界があります。
一時期「深夜バス」の事故が多発した時期がありました。
激安の運賃競争で疲弊したバス運転手が、次々と事故を起こしました。
行政からの指導もあって、現在では深夜バスの運転手の「ワンオペ」を廃止している事業者も多いのではないでしょうか?
しかしその分人件費がかさみ、赤字で苦しんでいる「破産カウントダウン」の深夜バス関連の会社もあるのでないかと不安になります。
「安い」ことは顧客にとっては歓迎すべきことです。
しかし現在の日本では、その「安さ」は限界を超えています。
限界を超えた先には何があるか。
それは事業の破綻と、それに関わる全ての人の不幸です。
今どき「生ビール500円」では、お客さんが来ないんです。 なので居酒屋各社は無理を承知で、生ビールを安く販売しています。 これらの現象は「デフレ」を脱却したのではなく「デフレ」が定着したということです。 デフレ下での商売は消耗戦です。 日本はデフレから脱却することが出来ずに、永遠にこのデフレの元で厳しい商売を続けていかなくてはならないのだと思います。
「安い」→「便利」→「嬉しい」
という利用者のツケが、いつか自分に降り掛かってきます。
今回のてるみくらぶは、その一つの例なような気がします。
まとめ
決して「てるみくらぶ」の経営を養護するわけではありません。
でも、日本の世の中全体が「安さ」に消耗しているのは事実だと思います。
今後さらに、これと似たような企業破産、破綻は起こって行くでしょう。
本当に日本経済の本質は、いくところまで来ています。
マジでヤバいんです。
この本質は、僕が事業を辞めた大きな理由のひとつです。
だからこそ今後は、就職する企業や組織に、そして国に頼るのではなく自分自身のスキルを上げて自分で生き抜いて行く、というスタンスが必要なんだと思います。
次に潰れるのは、あなたの勤めている会社かも知れません。
介護士ベイベー