こんにちは。無職から派遣看護助手に転職した、ままるです。
以前、すかいらーくやクリスピークリームなど日本の外食チェーンの限界についてエントリーを立てました。
すかいらーく24時間営業7割削減、クリスピークリーム新宿1号店閉店|日本の外食産業の苦悩 – グッドノージョブ
昨年末から今年に掛けて「白木屋」「魚民」「笑笑」などの居酒屋チェーンの大手「モンテローザ」も大量閉店して事業規模を縮小しているというニュースが入って来ました。
スクープ! 「魚民」モンテローザが大量閉店へ (東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース
レストラン業界だけでなく、居酒屋業界でも縮小の勢いは止まらない。
いったい日本の外食産業はどうなってしまうのでしょうか?
モンテローザとは
株式会社モンテローザは、1975年創業の日本を代表する居酒屋チェーンです。
1980年代は「ワタミ」の前身である「つぼ八」と人気を分け合った「白木屋」で一世を風靡し、1990年代に「ワタミ」が台頭して来ると「魚民」という新業態で常に日本の居酒屋チェーンをリードしてきました。
以前僕は飲食業界に身を置いていましたが、モンテローザは業界の中でも「イケイケ」で有名な会社です。
常に出店を攻勢させ、2013年にはグループ総数2000店のメガチェーンに成長しました。
日本の「居酒屋チェーン」のトップリーダーと言っても過言では無い、強力な企業です。
モンテローザの大量閉店
そのモンテローザが、昨年末から今年始めに掛けて大量に店舗を閉店しているようです。
実際には3カ月ほどで100店舗ほどの閉店をしていると見られ、この閉店ペースは外食チェーンとしてはかなりのハイペースです。
ファミレスや大型居酒屋チェーン店の場合、出店時に掛かるコストも莫大ですが、閉店時に掛かるコストもまたかなりの金額になります。
100席以上の店舗を閉鎖する場合、客席はもちろん厨房設備まで完全に撤退させる「スケルトン」を行うとすると、店舗によっては開業時と同じくらいの費用が必要になるケースもあります。
100店舗を数ヶ月で一気に閉店するとなると、今季の決算にはその閉店コストが計上される事になり、業績悪化は免れられないと思います。
モンテローザが、この時期に大量に店舗を閉店しなくては行けない理由はどこにあるのでしょうか?
モンテローザが大量閉店する理由
モンテローザ側からの説明では「人手不足」がその一番の原因であるとのことです。
確かに現在の外食産業の多くの悩みの要因は「人手不足」です。
大学生や20代の若者達の「飲食バイト離れ」はここ数年加速の一途をたどり、「すき家」を経営するゼンショーでは、深夜の「ワンオペ」が問題となり労働力の強化を画策しましたが、うまく行かず「人手不足」による店舗の閉店が相次ぎました。
しかしレストラン、居酒屋業態では「すき家」のようなファーストフードよりは「人手不足」が深刻化しているわけではありません。
モンテローザの大量閉店の理由は、人手不足だけが原因ではなく、やはり外食産業が抱える構造的な収益悪化が原因と考えるのが自然なようです。
居酒屋のビールは500円で無ければいけない
僕が飲食業に従事した20年前は、居酒屋はレストランよりもはるかに利益率の良い業態でした。
居酒屋でのメイン商材は「酒」です。
酒を大量に売り、そのつまみとして料理を売るのが居酒屋のビジネスモデルの基本です。
酒というものは、基本的には「水」です。
居酒屋では、様々な種類のお酒が売られていますが、実はその原価は対した金額にはなりません。
居酒屋で売られるお酒の内、最も原価が高いものが「生ビール」と言われています。
ちなみに中ジョッキ一杯の「生ビール」の原価は150円〜180円くらいです。
当然大手チェーンなどは、大量仕入れによってこの原価はさらに低くなると思います。
一杯原価150円の生ビールを、500円の値段で売ればその原価率は30%です。
居酒屋には「サワー」や「ハイボール」など様々なお酒のメニューがありますが、同じ500円で売れば、原価率は30%を超える事はありません。
実はこの
原価率30%
という数字が、外食産業では非常に重要な数字なのです。
「原価の3倍以上もお客から金をとってボッタクリだ!」
と一般の方は言うかも知れません。
しかし外食産業というものは、まず店舗取得費(土地、建物の契約、店舗の造作費など)や水光熱費、毎月の家賃、さらには人件費、食材仕入れ費など様々なコストが掛かります。
材料原価が30%を超えると、レストランも居酒屋もとたんにその経営は苦しくなります。
なので、まっとうな利益を出しながら長期に渡って居酒屋を経営するには、生ビールは500円でなければ実際問題やっていけないのです。
日本はデフレを脱却したのか?
アベノミクスによって、日本経済は上向きの方向だという報道が目につきます。
しかし我々庶民の生活は、一向に上向くどころかジワジワと負の方向にさえ向かっているように思います。
以前よく言われていた「デフレ」という言葉、最近あまり聞かなくなったと思いませんか?
日本は本当に「デフレ」を脱却したのでしょうか?
駅前の居酒屋の生ビールの値段を見てみて下さい。
きっと500円で販売しているお店は、少ないと思います。
450円とか380円とか、ひどい所だと「生ビール200円!!」とかいうのぼりを高々と掲げて商売をしている居酒屋もあるほどです。
今どき「生ビール500円」では、お客さんが来ないんです。
なので居酒屋各社は無理を承知で、生ビールを安く販売しています。
これらの現象は「デフレ」を脱却したのではなく「デフレ」が定着したということです。
デフレ下での商売は消耗戦です。
日本はデフレから脱却することが出来ずに、永遠にこのデフレの元で厳しい商売を続けていかなくてはならないのだと思います。
モンテローザのような巨大居酒屋チェーンが、事業を縮小している背景には、このような理由があるのだと僕は思います。
まとめ
僕が何度も「飲食業界の危機」についてエントリーを立てるのは、やっぱり寂しさが一番だからです。
20数年前、大きな夢と希望を僕に与えてくれた「飲食業界」自体が、今沈みつつあります。
これはある意味で「時代の淘汰」と言わざるを得ませんが、長く飲食業界に関わってきた自分にはその一言では諦めきれない切ないものがあります。
飲食業界各社は、こんな厳しい時代でもなお様々なアイディアと行動力でその生き残りに掛けて努力をしています。
一個人の感想として、あの頃のように街に店に多くの人が消費を向けられる時代がまた来る事を期待して止みません。
介護士ベイベー